Sweet Lover
「マーサ、こんなところに突っ立っていて何するつもり? それともお姫様には介添えが必要だったかな」

響哉さんは口許に甘い笑みを浮かべると開けたドアを一度閉めて私の傍に来た。

くしゃりと頭を撫でると、自然に手を取って助手席まで連れて行き、おまけにドアまで開けてくれた。

「こちらへどうぞ、お嬢様」

……うわっ。

言葉の直後、頭にキスが落とされてどきりとする。

思わず振り向いたら視線が絡んだ。甘い、以外に表現できないような蕩けそうな笑みが、私だけに注がれている。

「唇にも、キスしましょうか?」

「……結構ですっ」

クスリとからかうように笑う声を聞きながら、私は逃げるように助手席へと乗り込んだ。
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