Sweet Lover
「少しは落ち着いたかしら?」

私がスープを飲み始めてしばらくしたら、好奇心を隠さない瞳で、向かいの席に座っていた響さんが切り出してきた。

それにしても、響さんって、響哉さんの母親とは思えないほど若々しい人だわ。

「はい――お陰さまで」

「そう。
 それは良かった。
 婚約発表は、いつにする?」

雑談と同じテンションでそう切り出されて、私は唖然とした。

スプーンを手から落とさなかったのが、奇跡だとしか言い用がないくらいに。

「それはいくらなんでも、気が早いのでは……」

慌てて口を挟んでくれた先生を、響さんは一瞥するだけで黙らせた。

なんていうか、すごい眼力――。
そうして、再び私に瞳を向けると、艶やかな笑みを見せる。

「早いわけないじゃない。遅すぎるわよ。
 もう、響哉とは17年の付き合いになるんですものねぇ」

――私が生まれる前から、響哉さんが私のことを知っているという意味ではそうなるかもしれませんが――

まだ、17歳にもなっていない私は、どう応えて良いのか見当がつかなくて黙り込む。
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