Sweet Lover
玄関で見送りながら、お父さんが口を開く。

「とにかく、あなたのスキャンダルに真朝を巻き込んで傷つけることだけはしないでくださいよ」

「真朝、身体に気をつけるのよ。いつでもここに帰ってきていいんだからね」

これはお母さんの言葉。
私は強く頷いた。

「マーサちゃんは私にとっても、大事な存在です。
 傷つけるようなことは誓って致しませんのでご安心下さい」

響哉さんは丁寧な口調を崩さずに頭を下げ、車の助手席を開けてくれた。

私はうるっと泣きそうになって、慌てて車に乗り込んだ。

別れることになって初めて気づく。

――私って、本当の両親を慕うのと同じくらい、義理の両親のこと慕っていたんだわ――。
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