Sweet Lover
「いらっしゃませ」

響哉さんに連れられて足を踏み入れた家具店に並ぶ品は、どれもこれもが一目でわかる高級品で、一見さんお断りの匂いがぷんぷんと漂っていた。

一際品の良い男性店員が、優雅かつ足早にこちらに向かってやってくる。
細身の男性はやや垂れた目じりをさらに下げて、親しみやすい笑みをその顔に乗せる。

「いらっしゃいませ、須藤様。ご連絡頂ければお迎えにあがりましたのに」

訓練の行き届いた耳障りの良い声。
響哉さんは唇の端を僅かにあげる。

「そうでしたね」

さらりと発せられた声からは、私に向ける時には必ずついている、蕩けそうな甘さのオブラートが根こそぎ排除されていた。
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