Sweet Lover
可愛らしい外装とは異なり、家の中はがらんとしていた。

それでも、シンプルに、鳥の世話に必要なものだけが揃っていて、鳩さえくれば今すぐにでも世話が出来るような気がする。

うっすらと、鳥の匂いも残っていた。
――染み付いていると言ったほうがいいのかもしれない。

その部屋の真ん中。
木製の椅子に括りつけられる形で、オダが座っていた。

「――あれ?
 こういう時は、須藤さんがやってきてくれるんじゃないの?」

私たちの姿を見た途端、ジーンズに白いシャツというシンプルな姿の青年は、強引に陽気な声を絞り出す。

でも、その顔は疲れ果てていた。

「須藤は仕事。
 そのくらいのスケジュール、知らないわけじゃないだろう?」

先生は微笑を浮かべて、ゆっくりと歩き出す。
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