Sweet Lover
細身の男は、縛られて俯いたまま、ずずと鼻を啜った。
それから、顔をあげて得意げに捲くし立てる。

「知ってますよ。
 須藤さんのことなら、学生時代の自主制作映画から、最新作まで全て見てますし――」

「その上、ストーカーよろしく彼女のことまで調べ上げた、と?」

「ええ。
 その後ろの彼女が、二階堂さんと彼の子供だと言う事も」

ひゅう、と、先生が口笛を吹く。

「たいした情報力だな」

一見賞賛しているように聞こえるその言葉は、実は皮肉に満ちているけれども、もちろんほぼ初対面と言っていいオダにそんなことが分かるはずもない。

「ストイックなまでに、ハリウッドでの活躍を邁進していくあの姿に、感銘を覚えたんですっ」

熱狂的なファンであることを微塵も隠さない、熱い口調。
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