Sweet Lover
「元々、二人が婚約関係にあることは知っていた。
 だから、二人で暮らすための詭弁かと勘繰ったりもしたけれど。
 両親のことを思い出すことは彼女にとってもきっとプラスだと、須藤さんは真剣にそう言った。
 もちろん、記憶を取り戻すにあたっては問題ないという医師の所見もあるし、無理強いはしない、とも――。
 ただ、その目的を明かして真朝を誘っては何の意味もないとも言われて。
 だから、あんな形で真朝を家から出すことになってしまった」

無口なお父さんが、珍しく長く喋るので、私は黙って聞いていた。

「本当は、年頃の大切な娘を男と同居させるなんて、耐えられないんだが――」

ふぅ、と、お父さんは苦々しい笑いを浮かべた。

「兄貴と同じで、お父さんも、どうも須藤さんには言いくるめられるようだ」
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