Sweet Lover
「本当に可愛くないね、梨音ちゃんは。
 おいで、マーサ」

力づくで抱き上げられた私は、悲鳴さえもあげることができない。

「――だから、ここのベッドをそういうことに利用するなって言ってるだろ?」

先生の呆れた声も響哉さんの耳には入らないみたい。

「折角だから梨音ちゃんにも聞かせてあげようか?
 マーサの初めての声を」

――いやいやいや。

言ってる意味が分かりませんけど。

ベッドに押し倒された私は、思わず身を捩る。

「――授業に戻ります。
 後は二人でお幸せに」

梨音は感情の見えない声でそう言うと、本当に保健室から出て行った。

――やぁ、梨音。
  私を置いていかないでっ。
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