砂の鎖
瞬間、もの言いたげな視線を感じれば相手はマネージャーの横井で。
彼女はそれでも気まずそうにすぐに視線を逸らし、いつもの様に私に刺すような視線を送ってくることは無かった。
そして彼女に、他の女子マネージャーが駆け寄り慰めるように肩を抱いて何かを言っていて……

私は彼らの様子を、遠くから眺めていた。

まるで人ごとのように。



人気者の陸上部のエースには当たり前のように恋人がいて、彼に恋していた女子マネージャーが嫉妬と落胆に苛まれている。

男子達は彼を囃し立てじゃれあって。
女子は彼女に寄り添い慰める。


そんな、絵に描いた様にありきたりで綺麗な高校生活の一ページ。

そこに自分が関与しているなんて、とてもじゃないけど思えない。

あそこは、私とは違う世界の様に思えて仕方がない……



「でも須藤ってアレだよな……」

「まあでも、何だかんだ言っても美人だしな」


そんな声が陸上部とは反対側から聞こえてきて、思わず私は顔を上げた。


「やべ……」

「お前声でけーんだって」


名前は知らない、でも顔は見たことがある。同学年と思われる男子生徒が二人、足早に通り過ぎていった。
それと同時に慌てて視線を逸らす人が何人もいて、注目の的になってしまっていた事を思い出した。


(ほんとに、何考えてるの!?)


居たたまれなくなった私は周りと視線を合わせないように気をつけながら、足早に駐輪場へと向かった。
< 128 / 186 >

この作品をシェア

pagetop