砂の鎖
はちみつよりも砂糖菓子よりも甘ったるい拓真。

でもそれに、私がいつも苛々していたのも本当だった。


――亜澄、何小難しい本読んでるの?


図書室でかけられた麻紀の言葉が聞こえる。
あの時私は、罪を、覗かれた様な気がして慌てて冗談にして誤魔化した。

誰にも気が付かれるわけにはいかなかった。



「拓真……なんて……大嫌い」


――俺と付き合いたくない理由。言える訳、無いよな……


私を責めるように言った、真人の言葉が聞こえる。
でも真人は、全て気が付いていたんだ。


(言える訳、無いよ……)


どうしてだろう。
私は……



――あずの嫌いは、好きってことだって知ってるよ。



(お願い……気が付かないで……)



そっと、気が付かれないようにそっと、甘い言葉ばかりを零す拓真の唇に……


掠める様なキスをした……


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