砂の鎖
それまで母子二人きりで暮らしてきた。
そのママを喪った。


その時、私を救ってくれたのは拓真だった。

私の傍にいてくれたのは、拓真ただ一人だった。

一緒に哀しみに浸ってくれた人が拓真だった。


拓真と二人きりで生活をして、拓真の優しさに触れ、甘やかされて。

優しさに触れるたび好きになった。
甘やかされるたび、叶わない想いが強くなる事に苛立ちが募った。


情けなくて少し頼りないところもあって、私の自尊心を満たしてくれた。
私よりもずっと大人だから、生意気な私を笑って許せるんだと知っていた。
私の憎まれ口が素直に甘えるのが苦手な私の甘えだと、拓真はきっと分かっていた。
そして許されることも、私は分かっていた。


そんな拓真に、私が惹かれたのもまた、とても自然なことだったと思う。

むしろ、惹かれない方がおかしい。



それでも私の想いは、行き場も未来も無いものだった……
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