砂の鎖
まさか、真人とすることになるなんて思っていなかった。
いや。真人と付き合っているんだから、そうなるのは必然だったわけだけど。

それ以前に、真人と付き合うことになるとは思っていなかったというか……
今までなんとなく、付き合っているという実感無くきてしまったというか……


(変なの……あの真人と……)


真人はいつも笑っている。
真人は何も言わない。


『須藤のこと、ずっと見てたんだ』


真人はあの黴臭い資料室でそう言った。
その瞬間、私は多分、真人と違う事を思い出していた。

真人の『ずっと』と私の『ずっと』は意味が違う。


真人に告白をされた時、私は本当に驚いた。
真人に私は恋をしていたわけじゃなかった。
それでも、私は真人の告白を受け入れた。

私のママに似た目立つ容姿に興味を持つ男子生徒は今までも多少はいた。
その殆どは、少し不良っぽい、自分に自信がある年上の男の子が多かった。
そんな彼らに私はいつも、どう言ったら機嫌を損ねず断れるだろうとばかり考えていたんだ。

私は、真人に恋をしていたわけじゃない。
それでも、誰でも良かったわけでもない。

私のほのかな期待の様な感情を裏切った真人。
真人は何も言わない。
だからきっと、覚えていないだろう。
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