砂の鎖
『かっこいいよな』


そう言って、真人が私に太陽みたいな笑顔を向けたのは小学四年生の頃だ。

他人に無関心の東京からこの町に来た私は当時既にすっかり浮いてしまっていて、そんな時に私に声をかけてきた隣のクラスの男の子がいた。

それが、真人だった。

真人はその当時から学校で一番足が速くて頭が良くて。
小学生の頃のモテる男の子の基準は「足の速さ」というバカバカしい物だったから。
ある意味今よりも真人は人気があったと思う。
クラスが違うにも関わらず、教室内で女子から“真人君”というフレーズが聞こえてこない日は無かったくらいだ。

当時、私のクラスは男子と女子は敵対しているかの様によそよそしかったけれど、真人のクラスは男子と女子がとても仲が良かった。
多分、真人の周囲に人が集まったんだと思う。
いつでも人の中心で太陽の様に笑っていた真人を、私はよく覚えていた。

私と真人が会話を交わしたのは一度だけだ。

真人は五年生になる時、中学校受験に有利な校区とやらに引っ越していった。
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