砂の鎖
麻紀はテニス部に所属している。
テニス部は運動部の中では力が入っていない方だ。雨が降り出せばすぐに部活は休みになる。
あくまでも、我が校の運動部の中では力が入っていない方というだけで外で活動する運動部が雨が降り出せば休むのは普通のことだと私は思う。

けれど真人が所属する陸上部は少しの雨では練習は続くし、本格的に降り出しても待機か校舎内の廊下や階段で筋トレだ。

因みに麻紀の彼氏は隣のクラスのバレー部の男の子だ。
当然練習場所が体育館なので雨では練習は無くならない。

麻紀の彼氏のことは私もよく知っている。
一年生の頃、同じクラスで付き合い始めた二人と私もクラスメイトだったから。

私が真人と付き合い始めて、麻紀と過ごしていた昼休みをあっさりと真人と過ごすようになったのは麻紀にも彼氏がいたからだ。

麻紀が友達が少ない私の為に、学内での時間は私に充ててくれていることにずっと気が付いてはいた。


「民法? あんた何小難しい本読んでるの?」


麻紀は私が片付けた本棚を虫でも見るかのように眉を顰めてみた。
彼女はよく文字が多い本は嫌いだと言っていた。私の唯一の趣味である読書にも、憩いの場である図書室にも理解は示さない。


「ねえ麻紀。弁護士と医者ってどっちが儲かるか知ってる?」


私は麻紀のその嫌そうな顔を見て思わず笑ってしまった。


「知らないけど、どっちにしてもあんたに似合わないね」

「そうかな。私貧乏だったからお金稼げる仕事に就きたいんだよね」

「亜澄のうち戸建てじゃん」

「中古だけどね。ここ越してくる前の家超狭かったし」


私の言葉に、麻紀も笑う。


「貧乏とか、亜澄のママには似合わないね。女手ひとつで店まで持ってたのに」

「お金はいつも無かったよ? 我が家は常に自転車操業」

「そう? 亜澄は意外と堅実じゃん」


そんな風に話していれば、図書委員ににらまれた。
今日は少し気難しそうな一年生の男子が当番だ。
あの子は図書当番じゃなくてもいつも図書室にいる。


「麻紀、ここじゃあんま喋れないから教室行こうか?」


私の提案と目くばせに、麻紀は振り返り図書委員を見て、それから肩を竦めた。
どうにもこういう場は苦手だと、小さな声でぼやきながら。
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