砂の鎖
「あず。ほら。弁当って……」

「あ」


やや緊迫した沈黙を作った私の後ろから間が抜けた場違いな拓真の声が聞こえ、真人は私から拓真へと視線を移した。


「……誰だよ。お前」


私も慌てて振り向けば、拓真は威圧するように真人を見据えている。

……やばい。
これはめんどくさい展開だ……


「……初めまして。亜澄さんのクラスメイトの里中真人です」


けれどさすが優等生の真人。
綺麗に背筋をただして拓真に礼をすると、とても無難な自己紹介をした。

それはそうだ。私と真人はただのクラスメイトの筈。

真人が罰ゲームで私と付き合っていた事が発覚したのだから、まさか今も付き合っているなんてことはないだろうからこの自己紹介はとても的を射ている。

でも変にややこしい事を言われなくてホッと私は胸を撫で下ろした。


「で、ただのクラスメイトが朝から何の用だよ」


けれど拓真はどうやら納得していないようだ。
珍しく怖い顔で真人を睨み付けたままだ。


「いや、拓真。真人はあの日……」

「いえ。僕はただのクラスメイトではなくて、亜澄さんと付き合ってます」


私が拓真に言い訳をしようとしたその声を遮って、真人は拓真の目を見てそう言った。
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