砂の鎖
真人の視線はあまりにもまっすぐで、名は体を表すなんて言葉や、真人には朝が似合うな、とか。
そんなどうでもいい事が頭を過った。

けれどそんなどうでもいいことを考えてる場合じゃない!


「真人!?」


何言いだすのよ!! 付き合ってたとしたってタイミングとか色々あるでしょ普通!!


「あずっ! どういうことだ! 聞いてないぞ!」


一瞬私と同じようにあっけにとられていたらしい拓真がまた騒ぎ出した。
こうなるから嫌なのよ!


「もうっ! うるさい拓真!」

「あず!!」

「真人! とりあえず早く行こう!」


これ以上煩くなるのはごめんだ。
大体既に遅刻気味なんだし!

私が慌てて真人の腕を掴んで連れ出そうとしたけれど、真人はそれには応じず、やはり拓真を見てもう一度頭を下げた。

失礼します、と真人は静かに言って私に従って早足で歩きだした。


拓真が何かまだ騒いでいるけれど、とりあえず無視して私は走って角まで向かった。
ああ。後でご近所さんに何か言われるかもしれない……
お隣さんには先におすそ分けでも持っていった方がいいかな……
何か家に無かったっけ……
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