LOVE SICK
***


「……お前さ。俺に何の恨みがあるワケ? 人の祝いの日に……わざわざ休日出勤して揉め事起こしてんなよ」

「……すみません」


深夜にオフィスにいる斎木さんと私。

そして心配して付いてきた田嶋くん。
いや。若年者の彼は今日のハンドルキーパーなんだろう。多分。

あの後、さすがに斎木さんに連絡をするわけにはいかず。
すぐにチーフに電話をした。

それなのに、この人自身が披露宴と二次会の間の僅かな時間を縫ってオフィスに戻って来たなんて。
信じられない……


「……石野さんには俺から電話しといたから」

「はい……」


見る筈の無かった彼の晴れ姿。

オフィスに来るスーツと対して代わり映えしないが生地に僅かにラメが入ったグレーのスーツに胸元のブートニア。
いつもよりしっかりと固められた髪型は、確かに華やかさを残している。

この場に、酷く削ぐわない……


「今回はお前にもペナルティあるからな」

「……分かってます」


なんて事をしてしまったんだろうと、思う。
休日出勤の果てに担当のスタッフと喧嘩をして支店長自らに後処理をさせるなんて……
ものすごく幼稚な失敗だ。

泣きそうになりながら俯く私に、斎木さんは少しだけ呆れた様な笑顔を向けた。


「……まあ、あの石野さんもさ。扱いにくいけどおだてれば頑張ってくれる子なんだよ」

「それは……!」


けれどその言葉に反射的に彼を見上げて言い返していた。


「だってあの子……私が嫌だから仕事行かないって……そんなのおかしくないですか!?」

「おかしいな。おかしいよ。けどな川井。お前が企業に売ってる商品は何だ?」

「……っ」

「お前は一体何の営業をしてるんだ?」


私の言葉に笑顔を引っ込めて厳しい瞳を向けられれば……

それ以上言い返す言葉は見つからなかった。
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