LOVE SICK
私の言葉に石野さんは驚いた表情をしてから下唇を噛み締めた。

それから俯いた彼女は、一瞬泣きそうな顔をした様に見えた。


「……もういいわよ。辞めてやる! こんな所!」

「ちょっと、真紀!」


石野さんは田中さんの制止を振り切って、私を押しのけて駆け出した。


「あ……ごめんなさい! 川井さん、後で連絡します。真紀っ!」


田中さんは私と石野さんが出ていった方向を見比べて、それから石野さんを追って行った。


一人残された私は、追いかけるでも無く誰もいなくなったトイレの壁に背中をつけて拳を握りしめた。
遮る二人がいなくなった鏡に、私自身の疲れた顔が写っている。

目を逸らし、溜息を吐いた。


彼女の考え方は許せない。
けど……


「何してるんだ……私……」


私は、石野さんと話し合う為に彼女を呼び出した筈なのに……

熱くなってしまった自分への、後悔が押し寄せた。
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