LOVE SICK
私がここに来て三十分ほど過ぎただろうか。
何をしていたわけでも無い。ただ身じろぎせずにじっと待っていただけだ。
それでもその時間が、苦痛ではなかった。

駐車場から続くアプローチをこちらに向かって来る、夕陽に照らされる人影が見えた。
その人に、私の目は吸い寄せられる。

どうしてだろう。逆光で色は見えない筈なのに、確かに分かるんだ。
あの人の髪の色と、瞳の色が……
私の好きな、あの綺麗なダークブラウンが……

もっと緊張するのだろうと思っていた。
それでも、私の心に広がったのは安堵だ……


「……祐さん」


怖気付いた訳じゃない。
それでも聞こえるか聞こえないか。
小さな声でそっと、彼の名前を呼んだ。

本当に小さな声だったのに、彼は私に気が付いてくれる。
ゆっくりと、此方に視線が動いた。

彼が私の姿を捉えると、私はそれだけで泣きたくなった。

けれど彼の瞳は驚きに見開かれた。


「るう……何を……」


私はいつも、彼に迷惑を掛けて驚かせてばかりいた気がする。
それも、これで最後になるのかもしれない……

少しだけ、勇気を振り絞る為に、拳を握り息を吸い込んだ。
まだ、暖かい空気が肺を満たす。


「今日、お子さんに会う日でしょう? あの日から、ちょうど一ヶ月です」


困った様に眉を顰めた彼に、振り絞ったばかりの勇気が萎んでしまいそうになった。
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