LOVE SICK
るうが、家に来るようになってから変わった事が幾つもある。


その一つが、これ。

彼女と夜を過ごして迎える朝は、必ずいつもより早起きをする羽目になる。
今ではるうがいない日でも30分前に目が覚めるようになった。


朝は苦手じゃない。
むしろ朝の空気は好きだ。
朝は夜よりも時間が濃縮されている気がする。
一日を始めるその時間を充実させるとその日一日が上手くいく気がしている。

寝過ごして慌ただしく朝の時間を過ごしてしまうとものすごく損をした気になる。

だから早起きは苦にはならないけれど、始めは少し困っていた。


……るうは、寝起きが物凄く悪い。

実は以前からそんな気はしていた。

毎朝カフェで見かける彼女はいつだって眠そうに気怠げで。
ブレンドコーヒーにクリープを入れてゆったりとスプーンを回していた。
何をするわけでもなくボンヤリと、まだ起きていないかの様な瞳で珈琲を一口。

それから、何故か少し前から突然吸う様になった煙草に火を付けて。
やはり何をするわけでも無くボンヤリとしていた。

そんな彼女は一杯の珈琲を飲み終わる頃は入店時とはまるで別人。
最後に腕時計で時間を確認し、携帯電話を確認すると気合を入れるかの様に勢いよく立ち上がる。


トレイを持って、眠たげにぼんやりしていた顔を引き締めて、背筋を伸ばし颯爽と店を後にする様は若い奴らから見れば多分“出来る女”。

入る時と出て行く時のギャップが可笑しくて……
朝刊に視線を向けるふりをしながら密かに盗み見ていた。
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