LOVE SICK
当たり前の話だが、俺は彼女にその時から想いを寄せていたわけでは無い。
そんな青臭い片想いができる歳でも無いし、彼女は俺より随分若い。そもそもがお互いそういう対象で見る相手ではないだろう。

素性も名前も知らなければ言葉を交わす事もなく、目が合う事さえもない。
それでも毎朝、同じ場所で僅かな時間を共有する彼女がその店内では少しだけ、特別な存在だった。

例えば偶々、隣に座れれば少しだけ嬉しい。

自分も含め、圧倒的にスーツのオヤジだらけのカフェの喫煙席で物言わぬ彼女の存在は密かに目立っていたんじゃないだろうか。
彼女を同じように眺めていた男はきっと俺だけではない。


ただそんな彼女と、まさかこんな関係になるなんて……
想像すらしなかったけれど……


とにもかくにも、るうが寝起きが悪いだろう事は何と無く想像はしていた。
だから想定の範囲内とは言え、毎朝予定の時刻より30分以上前に鳴らされる携帯のアラームに始めは何事かと思った。
肝心のるうはそんな音では微動だにしないのだから……

始めは勝手に触ったら怒られるかと思いるうを起こそうとしたけれど、中々起きないるうに諦めて自分で止める様になった。

るうは、うちに来ていない時は一体どうやって起きているんだろう……
毎朝カフェに来ていたくらいだから遅刻してはいないのだろうけど、少し心配になる。
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