LOVE SICK
目が覚めてしまえばそのままもう30分寝付けるタイプでもない俺は、そのまま起きて朝食の準備を始めた。

これも、るうが来てから変わった事。


毎朝カフェで新聞を読みながらの朝食とコーヒーが定番だったけれど、るうの携帯に起こされてやる事もなくコーヒーを入れればるうに酷く感動されて、味をしめた単純な男。

元々料理をするのは好きで、誰かに喜んで貰えるのが嬉しくて、子供の頃の最初の夢は野球選手でも宇宙飛行士でもなくて実はシェフだったくらいだ。
いつの間にかそこまでの情熱はなくなってしまったけれど……

るうが何でも美味しそうに食べる姿に密かに喜びが隠せずにいる。

るうには『付き合い始めてから太った』と文句を言われるけれど……
それさえも賛辞に聴こえてしまい調子に乗っている俺はそのうちるうに本気で怒られるかもしれない。

二人分のパンをトースターに放り込めばジリジリと小さく新しい音が朝のBGMに加わった。
卵をさっとフライパンで焼いて。
保存して置いたサーモンのマリネとサニーレタスを取り出しよく水分を拭き取る。

珈琲メーカーに豆を入れれば豆を粉砕するけたたましい音がそれまでの小さな音たちを全てかき消した。
この音が心地よく感じるのは、この後の結果を知っているからなんだろう。

作り置いておいたコンソメのスープを電子レンジに放り込み、コーヒーメーカから黒い液体がポタリポタリと落ち始めた頃にもう一度寝室に戻った。
< 170 / 233 >

この作品をシェア

pagetop