LOVE SICK
同僚の彼女、川井るうと俺は同い年の同期だ。

とは言っても俺は大卒の新入社員。彼女は短大卒の中途採用。
だから同時期入社だが会社的には同期とは言い切れない。

社会に出るまでは学歴は重要な武器だがいざ社会に出てしまってからは関係ない。
俺は彼女にその事実を身を持って教えられた。

入社してすぐ、他にも何人かいた新入社員は名刺の受け渡しや電話応対を中心としたいわゆる“社会人マナー”や各課でどんな仕事をしているのかとか、座学中心の新入社員研修を数か月受けることになった。

けれど彼女は会社の概要についての研修を共に受けた後、早々に花形部署である営業部に配属された。

彼女は「大卒とは違うから。私は現場仕事だけ覚えればいいの。大卒の新入社員は幹部候補でしょ?」そう言って俺たちを持ち上げたけれどそれはただの社交辞令だったと思う。

前職で既に二年間営業をしていたという彼女はそれなりに即戦力を期待されていたようだった。


単純に、華やかなイメージや人と話すのが嫌いではないという漠然な気持ちだけで営業職を希望していた俺はそんな彼女を羨んだ。

営業部を希望していた新入社員は俺以外にもいたが希望が通ったのは俺一人だ。
だから誰も言葉にはしなかったものの『川井さんがいなければ』という感情を持っていた奴もいた筈だ。


俺が希望通り営業部に配属された頃は既に担当を抱えて忙しそうにしていた。
そんな彼女が眩しくも思えたし、俺も多少は妬みの様な感情も持っていた。

とは言え、スタートにこそ多少の差をつけられたが二人きりの営業課の同期として、俺たちはそれなりに親しくもなった。
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