LOVE SICK
「……徹さん」


久しぶりに呼んだ。
別れてから一度も呼ばなかった、彼の名前。

少し、違和感があった。

斎木さんは目を丸くして私を見た。
二人の時は私の名前を呼ぶくせに、私から呼ばれるとは思っていなかったみたいだ。

私は一つ息を吸い込み、それから微笑した。


「あなたって、ホント子供ですよね」

「な……」


ニコリと笑って言った私の言葉は予想外だったみたい。
珍しい。鳩が豆鉄砲を食ったような顔してる。


「構われたがりだし目立ちたがりだしワガママだし自分勝手だし……」

「てめー」


この人は一体私に何を期待していたんだろう。
今更私があなたに優しくする筈ないでしょう。

悪口のオンパレードに唖然としていた斎木さんは少し青筋をたてて睨んできた。


「貴方が私に今更構うのは、他の子のおもちゃを子供が欲しがってるのと一緒です」


けれど、笑顔を引っ込めはっきりと言えば、斎木さんは黙った。


「ずっと私があなたを好きなままだったら、貴方はそんな風に思わない筈です」


何か言いたげに、それでも何も言わなかった。
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