LOVE SICK
それから、気を取り直して身体を洗い始めれば、丁寧に付けられた跡に驚いた。

深酔いしていたけれど記憶はしっかりしているつもりだった。
それでも、覚えてない様な所に迄付けられた跡……

男の人って、遊びの女にも跡を残すものだろうか。
誰かにバレたら困るとか思わないんだろうか。

アルコールの所為でそこまで気が回らなかった?
あの人は涼しい顔をしている様に見えたけれど、意外と酔っぱらっていたのだろうか。

それとも意外と、女慣れしてない人だったとか……?


「……そんなわけ、無いか」


そこ迄考えて又、独り言。

その自分で言った言葉に、妙に恥ずかしくなってきた。


昨夜の彼の、熱を、思い出してしまって……


彼は、絶対に女慣れしてない人なんかじゃない。


お店でしたキスなんかと訳が違う、強引で獣の様な熱いキスも。

支えてくれた優しい手とは違う、私の反応を確かめる様になぞる扇情的なその手つきも。

呆れて優しく子供を見るみたいに見つめる瞳とは違う、私の心臓を止めるかの様な妖艶なその瞳も。


絶対に、相当の経験者だ。
崩れ込む様に意識を飛ばした私は……完敗だったんだから……


まさかの事態だ。


愛情も何も無く、お互い遊びで、一夜限りで、名前さえも知らなくて。
それなのに……


(今迄で、一番良かったかも……)


なんて、私は最低だ……

身体に残された刻印の所為ではっきりと思い出してしまったその記憶に、寝付く事が出来なかったなんて……


……恥ずかし過ぎて、誰にも言えない。
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