恋するオトコのクリスマス
二十二時半を過ぎていたが、九階のレストランはかなりの賑わいだ。
クリスマスの飾りで店内はいっそう華やぎ、それぞれのテーブルが楽しそうなムードで溢れ返っていた。


「今日は遅かったのね。何かトラブルがあったの?」


最終便の到着時刻は二十一時。
何も問題がなければ、あと三十分は早くホテルに着いていただろう。


「運行にトラブルは一切ないよ。ただ……キャプテンがね」

「問題のある人……とか?」


ナイフとフォークを止め、心配そうな顔をする美夏に笑いながら答えた。


「いや、そうじゃなくて……今日組んだキャプテンは婚約したばかりなんだ。ゲートを抜けたところに彼女が待ってて……どうやら、一緒に飛んできたのは彼女のサプライズだったらしい。顔を見たとたん、いちゃつき始めてね。ホント、参った」

「婚約したばかりかぁ~せっかくのイヴだものね。空港ってわけもなく盛り上がっちゃうし……なんだか懐かしい」


自分たちのことを思い出したのか、美夏もやけに嬉しそうだ。


「まあ、三年前のことを言われたら、俺も強くは出られないしな」

「まだ言われるの? 相手が機長さんなら言われっ放しよね。ごめんなさい……でも、婚約って、機長さんはお若い方?」

「ああ、俺より二歳下」


瞬はできるだけさりげなく答える。

だが、予想どおり美夏の顔は曇った。


「ひょっとして、ニュースになってた最年少機長さん? ……年下の上司って、やっぱり仕事しづらいわよね?」

「別に年齢は関係ないさ」

「その機長さんの婚約者って、航空会社の関係者の方?」

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