恋するオトコのクリスマス
『また二年? 帰ってきたら今度はどんな理由で引き延ばすの? だったら、結婚なんてしたくないんだって正直に言ってよ!』


最初に返ってきた言葉がコレだ。

結婚を延期したいと思っているわけではない。すぐにでも結婚したいと思っている。志穂のことを愛しているし、東京での二年間も浮気など考えたこともなかった。

そう言いたいのに、巽には上手く説明することができない。


『土日や祝祭日が忙しくて、クリスマスやバレンタインもデートできない。後片づけや下ごしらえとか言って勤務時間が長いから、一緒に暮らしてたときも、ふたりで過ごす時間はホント短かった』


志穂はこれまでの不満をここぞとばかり口にして、さらに彼を追い詰める。

だが、一番堪えた言葉は……。


『でも、ちょうどよかった……わたし、病院の先生に告白されたの。その人のこと、いいなって思ってたから……たっちゃんのことは、本気で好きじゃなかったのかもしれない。今度の思いが……本当の恋なのかも。だから……』


休憩時間に志穂と駐車場で話した。

渡仏まで時間のない巽が、少しでも志穂と話し合う時間が欲しくて、仕事の合間に呼び出したのだ。

だが、すべてが無駄に終わったらしい。


レストランは二十五日も予約がいっぱいで、本当なら彼も働くべきだろう。
だが……。


『結婚は延期にしたんだろう? クリスマスくらい彼女と一緒に過ごしてやれよ』


レストランの支配人は巽を――と言うより志穂のことを気遣い、そう言いながら休みをくれた。
とても『他の男と過ごすそうです』とは言えない巽だった。

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