恋するオトコのクリスマス
「お義父さんとお義母さんは怖いけど……でも、和也くんのご両親だもの」

「あの両親にそんな甘い考えは……」

「うん、通用しないかも……。だけど、もし死んじゃったりしたらやり直せないじゃない？」


歩美の顔が一瞬曇った。
彼女の両親はすでに亡くなっている。会うことはもちろん、話しをすることも喧嘩をすることもできない。


「だから、ちょっと頑張ってみようかなぁなんて。あ、和也くんに恥をかかさないようにって、スーツとか、コートとか、生駒さんに選んでもらっちゃった。お化粧はちょこっとだけね。マスカラはやめにしたの。だって、もう二度とパンダは……」


花が咲いたように笑う歩美の顔を見た瞬間、抱き締めていた。


「悪かった。俺が間違ってたよ」

「和也くん？」


彼は歩美の顔を覗き込みつつ、


「おまえのこと、恥ずかしいなんて思っちゃいない。なんか言う奴がいたら、俺が守ってやる。どうしても我慢できなくなったら言えよ。俺はいつでも高千穂の家を捨てる覚悟はあるんだから」


今にもキスしそうな勢いで……というより、キスしたくて堪らない気分で口にする。


「う、うん、ありがたいけど……和也くん、人が見てる」


歩美が真っ赤になりながら答えた。

そう言えば、背後からキャーキャー声が聞こえてくる。
こういう場合、本来ならクルーの責任者が止めなければならない。だが、責任者である機長が和也なのだから……。

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