恋するオトコのクリスマス
~*~*~*~


O空港ターミナルビル、関係者用ゲートを抜けた瞬間、聞き慣れた声が耳に飛び込む。


「和也くん!!」


一瞬、聞き違いかと思った。

だが辺りを見回したとき、目に映った女性の姿に息を呑んだ。


「あ、歩美!? おまえ、なんでここにいるんだ?」


国内線到着ロビーに立つ歩美の姿に、和也は驚きの声を上げる。

オフホワイトのスーツ姿、キャメル色のダッフルコートを羽織り、手には焦げ茶色のボストンバッグを提げている。
グッと大人びた格好に和也は目を見張った。 


「来ちゃった。だってせっかくのクリスマスだし……やっぱり、一緒にいたいなぁって。和也くんの邪魔はしないから……ね?」


ピンク色のルージュが艶めき、和也の鼓動は速まる。

恋を自覚してから、和也の感情はめまぐるしく動くようになった。
ふとした瞬間、歩美の姿が堪らないほど可愛らしく感じる。そうなると、和也の中に抑えがたい衝動が走るのだ。

そんな歩美に『一緒にいたいなぁ』などと言われたら……。
実家になど帰らず、ふたりでホテルの部屋にでも飛び込みたい気分になる。


「いや……だが……」


歩美のために来ないよう言った。彼女は単純に和也の祖父の見舞いだと思っている。
だが、高千穂の家は伏魔殿のようなものだ。
裏に何が潜んでいるかわからない。

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