わたしの想いがとどくように
お昼、陸斗は職員室から出た。保健室に行く。幸乃に言いたいことがある。

「りっくーん!」

女生徒に抱き付かれる。陸斗はびっくりした。

「あたしと付き合ってよー!あんなブサチより、私なら満足させてあげるよ!」

陸斗はそれを聞くと、女生徒が逃げられないように壁に手をついた。
にっこり笑っている。ちょうど幸乃はトイレから出てきた。

「あのさ…、もっかいいってくれる?」

陸斗の笑顔は、怒っているときに出るのだ。

「上宮先生、生徒が怖がってます」

幸乃だ。眼鏡をかけて、髪を七三にしてきっちりまとめている。
陸斗の手をとると、幸乃は保健室に向かった。
保健室に入ると、陸斗は鍵をかけた。
そして、壁に手を当てて、幸乃を逃げられないようにする。

「ブサチだってさ」

「構いません、何を言われても」

幸乃がそう言うと、陸斗は幸乃の髪止めを取り、眼鏡をとった。
恥ずかしそうに視線を逸らす幸乃は、髪の長い綺麗な女性だ。
陸斗はくすっと笑った。そして、幸乃の腕を掴んだ。

「こんな女性がブスなはずないのに」

陸斗はそう言うと、幸乃にキスをした。幸乃は困った顔をしていた。
学校では嫌だといつも言っているのに、陸斗は絶対に止めないし、自分を支配してしまう。

「幸乃は可愛いよ。いつもこうやって赤くなるのが」

「…ここは学校です!」

「わかった、わかった。ごめん」

陸斗は幸乃の手を放す。幸乃は髪を纏めていた。
陸斗はお弁当を開きながらそれをじっと見ていた。

「何ですか?」

「別に」

陸斗はご飯を食べた。幸乃は髪の毛を束ね終わると、椅子に座った。

「お話しがあるんでしょう?」

「流石、暁のことだよ」

「…あぁ、暁くんなら大丈夫ですよ」

「大丈夫?」

幸乃は頷いた。

「弥生ちゃんが、前向きにしていたから」

「そっか、ほら妹があんなんだし、俺は担任だからさ、暁が心配なんだよ。
あいつ、結構弱い部分もあるし」

陸斗は真面目にそう言う。幸乃はそんな陸斗を見て微笑んだ。

「なんだよ」

「いや、やっぱり教師なんだなって思って」

「…でも、俺は止めなきゃいけないだろ?それまでは、しっかりやりたいし」

陸斗はそう言った。

「流石A型」

幸乃はさっき陸斗に言われたように言った。そして、続ける。

「問題ないですよ。暁くんは…、弥生ちゃんを気にかけてあげて…」

幸乃は心配そうにそう言った。陸斗はそれを見た。

「わかった、話してみる」

陸斗は約束した。弥生が無理をする。わかってはいた。
だが、弥生があまりにも上手く隠すので、そこまでは気にかけなかった。
幸乃はご飯を食べると、立ち上がった。

「チャイム鳴りますよ。具合の悪い生徒がくるかもしれないから、もう出ていってください」

幸乃はそう言うと、陸斗を立ち上がらせ、背中を押した。
陸斗は無理矢理保健室から出された。
幸乃はいつもきっちりしている。陸斗は職員室に戻った。

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