水泳のお時間
「桐谷がそう言うなら、いくらだって教えるよ」


瀬戸くんはそう言って微笑んでくれたかと思うと、わたしの頬から手を離した。


そして上からわたしを見おろしながら、優しく声をかけてくれる。


「桐谷、怖がらないで。大丈夫だから。肩の力を抜いて、小さく息を吸って?」


まるで語りかけるような瀬戸くんの言葉に、不思議と心が安心してきて。


わたしはコクンと頷きかえすと、言われたとおり肩の力を抜き、小さく息を吸った。


「そう。それでいいよ」


ようやく褒められて嬉しくなったのもつかの間、すぐに瀬戸くんの顔が近づいてきて、重なる唇。


でもやっぱりまだこの感触に慣れなくて

一瞬体がピクリと反応してしまったけれど、わたしは精一杯平常心を保とうと努める。


「…っ…」


もしかして、うまく出来ないわたしを気遣ってくれているの?


今度はただ触れるだけの、優しい口付け。


だけど緊張しているというのもあって、いつもより早く息があがってしまう。


少し苦しい…。

そう思うたびに、タイミングよく瀬戸くんが唇を離してくれて。


わたしが息を小さく吸うと、すぐにまた瀬戸くんが唇が塞いでくる。


そして何度も何度も、その繰り返し…。


数え切れないくらいのその口付けに、いつの間にかさっきまでの息苦しさも忘れ、わたしは夢中になっていたんだ。




「……」


どれくらい時間が過ぎたのかな。

一瞬気になったけれど、あれからわたしはずっと目を閉じたまま、瀬戸くんの指導に応えようととにかく必死になっていて。


そのまま一生懸命になっていたら…ふ、と瀬戸くんの手が動いた気がした。



瀬戸くん…?

目を閉じているわたしは、何が起きているのか分からないまま

瀬戸くんの体にギュッとしがみついたまま首をかしげる。


そしてその手はわたしのお腹の方まで下りたかと思うと、そのままブラウスの中に入ってきて……


♪~♪~


思わず目を見開いたその時、携帯の着信音が部屋に鳴り響いた。
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