水泳のお時間
それしか言葉にできなくて


下を向き、ぐしゃぐしゃになった顔で泣いていると、

突然瀬戸くんに腕をつかまれ、力任せに抱き寄せられた。


「…んっ…」


わたしの頭を両手で押さえながら、何度も瀬戸くんが唇を重ねてくる。


それはいつかの人工呼吸の日や、息の練習の時にしてくれた、

わたしを優しくイジワルく包み込んでくれるものとは少し違う。


今目の前に映る瀬戸くんは、息もさせてくれないくらい強引で、一方的で


“指導者”としてじゃない、“一人の男の人”。


…でも確かに伝わってくる、深くいたわるようなキスに、


わたしは涙を流しながらもゆっくりとまぶたを閉じ、

瀬戸くんのその高くて広い背中にギュッ…としがみついた。

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