甘い言葉で


眉間にシワを寄せ、あたしは荷物を抱きながらバスを降りた。


「思い出したくないって、アホ男のヤツ?違うなら.........もしかして、小学校の時の?」


あ、サチは覚えてました?まぁ、一緒に居たんだもんね。


「うん、まぁね。なぜ今なんだかわかんないけどね。あとさ、助けてくれたお兄ちゃんが誰だったのかが思い出せなくて.........」


「あ~あれね。私がタローちゃんを呼んだのは覚えてるんだけど......もう一人いたよね。そのタローちゃんのお友達があゆみのコトを助けてくれたんだよね?」


『ん~』と、二人で悩んでみても答えは出ず。今さら誰でも良いんだけどね。


「でもさ、その助けてくれた人が今もタローちゃんの友達だったら.........案外近くにいるかもよ?」


『会えるなら、会いたい?会わせてあげようか?なんてね。』
サチが名探偵のようにポーズを決めてあたしに言う。


「あら?もしかして、恋に落ちたり?するの?イヤン!」


美幸まで乗っかってきた。
貴女、あまり冗談言わないのに.........


「あたしはまだ恋しなくていいです!今年のキャンプも純粋にキャンプを楽しむために来ていますので!」


そう。
しばらく恋するのはお休みするのだ。
こんな女の子らしくないあたしは、どうせ男扱いされて友達止まりなんだから。


「殿方は、サチや美幸みたいな可愛かったり、気遣いが出来る女の子がタイプなんだよ」


「あら?私、結構攻めるわよ?」


「美幸の本性は少しわかってるけど、それはあまり表に出してないでしょ?」


本当に中身を知ってるサチの言葉は重みがあります。ね。


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