甘い言葉で


ユズくんの顔が近づいてきたかと思えば
『ペロリ』
いつかのあたしみたいに、ユズくんがへの字口のあたしの唇に触れてきた。


「あゆみは俺のって言ってるでしょ?待ってるんだからな?今さら逃げるなよ?」


『ボンッ!』
あたしの顔が真っ赤になったのは言うまでもなく。
寒いからじゃなくて、ユズくんのせいなのも言うまでもなく.........


『してやったり』なユズくんに対して『コンチクショウ』と、思えたのは内緒にしておかなくっちゃね。


自分の両手で頬を隠して視線を合わせないようにしても、ユズくんの腕はあたしの腰にしっかりと巻き付いている。


あぁ、もう!
はい、認めます!あたしは幸せ者です!
あたしを喜ばせてくれるこの人は、絶対に手放したくありません。
だからこそ、目の前の壁に向かって突き進み、絶対に乗り越えて見せます。


あたしの決意がわかったのか耳元に寄せられたユズくんの唇からはもっと甘い言葉が紡がれた。


「あゆみ」


「ん、なに?」


「俺の幸せは、あゆみの幸せ。あゆみがいれば俺も頑張れる。だから、あゆみの笑顔で俺を幸せにしてくれる?」


頬を伝う一筋の涙はユズくんの唇で拭われた。
ゆっくり頷いて、あたしのだした答えは


「あたしも、ユズくんがいれば頑張れるよ。ユズくんの笑顔であたしを幸せにしてね」


甘い言葉が心の奥に届くとこんなにも幸せになれるんだね。
自然と笑顔になれるんだよ?
幸せ以外のなにが当てはまるんだろう。


小さなあたしたちの恋は、これから大人になるにつれて自分達のペースで大きくしていけばいいもんね。


絶対にこの温もりは手放さないからね。
覚悟しててよ?
あたしの愛する.........


「柚希」


名前を呼んで、触れるだけのキスをしたときのあなたの顔。


一生、忘れないよ。




END.
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