重ねた嘘、募る思い

14.約束する陽さんとわたし


 ――帰らないで

 そう言われたわけではないけれど、なんとなくで感じ取り、勢いで残ってしまった。
 だけど考えてみたら……。

「わたし、ここにいてもいいんですか?」

 そう告げると、重ねられた手にぎゅっと力がこめられた。
 寂しそうな目を向ける陽さんの唇が「なんで?」と動く。

「だって、さっき真麻と話してたでしょう」
「さっき?」
「電話で……早く帰ってもらいたいって。迷惑なんだと思ったから」
「違うって! のんちゃんに風邪うつしたくなかったから……真麻ちゃんは看護師だし大丈夫かもしれないけど、のんちゃんはすぐうつっちゃいそうで心配で!」

 そんな理由だったなんて。
 迷惑がられていると思い込んで勝手に傷ついて。ひとりで空回りしてるだけだったんだ。
 ガックリ力が抜けたわたしは、その場にぺたりと座り込んでしまっていた。

「迷惑なわけない。のんちゃんの顔が見れてどんなにうれしかったか」

 ぎゅうっと握りしめられた手に更なる力がこめられる。
 すごく暖かい、むしろ熱い。また熱が上がってきたのかもしれない。だけどわたしの頬の熱さも負けていないような気がする。

「看護師でも、風邪引く時は引きますよ」

 自分でも何言ってるかわからない。
 どういう答えを返したらいいかわからなくて、でも黙っているのはいやだった。
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