重ねた嘘、募る思い
 
 絶句して両手で口を覆うわたしをふたりが目を細めて見つめている。

「ごめん、なさい。わたし……」

 ひとりで勘違いして、嫉妬して、逃げようとしてた。
 陽さんからも真麻からも、そして自分の気持ちからも。

「これで誤解は解けたわね。じゃー私は帰るわよ。明日も仕事なんだから」

 こたつの天板に手をついた真麻がすくっと立ち上がる。
 
「あっ、わたしもっ」

 同じように手をついて立ち上がった時、その手の甲に温かみを感じた。
 大きな暖かい手が重ねられて握りしめられている。
 そして、その持ち主が真剣な目でわたしを見上げていた。

 目が物語っている。

 ――帰らないでって。

「ママには私がうまーく言っておいてあげるから、任せておきなさい」

 ニンマリと満足そうな笑みを浮かべた真麻がわたし達にVサインを向けて、居間を後にした。
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