重ねた嘘、募る思い

 わたしは別に男嫌いなわけではない。
 好きな芸能人はいるし、タイプだってハッキリしているほうだと思う。電車の中で見かける素敵な男性に胸をときめかせたりだってする。

 普通の二十二歳だと思うのに、いざ男性を目の前にして接するとうまく話せない。どもるとかじゃなく、言葉が出てこない感じ。途端に無口になってしまう。相手からしたらとっても感じの悪い女に違いない。
 ある程度慣れてしまえば顔が赤くなるのはおさまるようだけど、そこまで長い期間接することなんて先生だったり職場の上司くらいしかない。上司でも同僚でも自分の部署の人限定になる。他部署へのお使いなんて一番やりたくない仕事。

 真麻の歴代の彼氏はきっとわたしをよく思っていないに違いない。紹介されても真っ赤になってだんまり。やっぱり自意識過剰だと思われていただろう。
 過去のことだけど真麻が当時の彼氏にわたしを紹介した後、すぐに「全然似てねえのな」と言われたことがある。
 それに対して真麻は「従姉妹だもん」と答えた。『当たり前でしょ』という言葉を飲み込んだ真麻が訝しげな目で彼氏を見たのをはっきり覚えている。その真麻の態度が彼氏の何かに触れたのかもしれない。直後彼氏が「名前はかわいいのにな」とボソリと聞こえよがしに漏らし、虐げるような笑みをわたしに向けた時、真麻はすぐにその男と別れた。

 まだつき合い始めたばかりだったのに。
 気にしてないからと言ったのに、真麻は「あんな男とつき合わなくてよかった」と誇らしげに笑った。
 それからその元彼氏にはずっと忌々しそうな目線で見られていたけど、気にしないようにしていた(実際は気になっていたけど)
< 7 / 203 >

この作品をシェア

pagetop