重ねた嘘、募る思い

2.陽さんとわたし

 
 クリスマスイブ当日。
 真麻は朝九時に仕事を終えて直接向かうとのことだった。
 うちと真麻の病院のちょうど中間地点辺りにT-Bランドがある。一度戻って来ると出るのが億劫になると言うので、現地で待ち合わせにした。

 iPodで音楽を聴きながらテーマパークの前に立ち尽くしているのは少し恥ずかしい。いかにもデートの待ち合わせっぽいけど来るのは真麻だし。
 キョロキョロ周りを見渡すと、チケット売場にはたくさんのカップルが仲睦まじそうに手を繋いだり、肩を組んだりしている。当日券を求めて長蛇の列が続いているけど、ふたり一緒なら問題ないというオーラがひしひしと伝わってきた。彼氏のコートのポケットに手を入れたり、ひとつの飲み物をふたりで飲んだり。

 入口のチケットをチェックしてもらう入場門は混んでいるので、その手前の広場で待つことにした。
 だだっ広いスペースの真ん中に大きな丸い花壇があって、そこには本物のモミの木を利用した巨大なクリスマスツリーが立っている。その前で正門の方を向いて待ち合わせをしている人たちも多いけど、すでに人が待つようなスペースはない。まるでツリーを取り囲むように人が待機している。

 わたしはさらに下がってパークの正門の内側に立ち、トートバックの中からスケッチブックを取り出した。
 唯一真麻より自分ができること、それは絵を描くことだと思っている。
 小さい頃から絵を描くのが好きで、気に入った風景はスケッチするのが趣味になっていた。

 待ち合わせの十時までまだ三十分もある。
 このツリーを描こうと思って早めに来たんだ。
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