愛してるの代わりに
名残惜しい気持ちを隠すように笑顔を向けると、未来が優しく微笑んでいた。
「よかった、幸せそうで。宮脇と話す雛子の顔、今まで見た中で一番幸せそうな顔してた」
しみじみと言われると、少し、いやかなり照れるものがある。
「でも未来ちゃん、よかったの? 行き先、私の為に東京にしてくれたんじゃ?」
「気にしない、気にしない。私がそうしたくて決めたんだから。それに、東京で行きたいお店もあるし、宮脇に雛子貸すのはご飯のときだけだもーん」
私の方が雛子と遊べる時間長いし、と慎吾がいたら拗ねそうなことを言いながら、「そろそろ行くね」と未来が立ち上がった。
雛子もそれに続く。
「集合時間とか費用とかのことはまた連絡するね、じゃ、また」
「うん、お仕事頑張ってね」
次に慎吾に会うときは、少しだけ涼しくなっているだろうか。
真夏の日差しを浴びながら、雛子は1か月後の再会への気持ちが高まっていくのを感じていた。
指折り数えて1か月後。
ついに東京への旅行の日がやってきた。
日程が決まってから1ヶ月。
雛子は、少しでも慎吾に可愛らしいところを見せようと、食事に気を遣い、ストレッチなどの軽い運動にも挑戦してきた。
未来に習って、睡眠前の美肌トレーニングもこの1ヶ月かかさなかった。
結果。
「雛子、前より可愛くなった?」
「ホント? ちょっとは効果出たのかな」
未来からの太鼓判をもらい、思わずガッツポーズ。
「ちょっとどころじゃないよ。これは宮脇びっくりするよ~」
美容のプロである親友からの太鼓判は、素直に嬉しい。
ウキウキする気分が更に高まる。
「でも、嬉しいからって浮かれすぎないでよ」
未来からの注意の言葉に重なるように駅の階段で躓く程度には浮かれているらしい。
「……気をつけます」
こうして2人は、東京へと旅立った。