愛してるの代わりに



テーブルの上のパンフレットをパラパラとめくっていた未来の手が止まる。

「よし、今年は東京に行こう。決めた、東京ね」

「え? 東京?」

「そ、東京。ついでに宮脇に会いに行こう。ほら、雛子電話出して」

未来の勢いに押され、無意識のうちにバッグの中から携帯電話を取り出す。

「宮脇に電話っ!」

「は、はい!」

気付いた時には勝手に慎吾の番号をダイヤルしていた。

切ろうとする雛子の手から未来が電話を奪う。

「未来ちゃんってば、どうするの?」

「いいからいいから~……あ、もしもしー。久しぶり、大西です~」

どうやら慎吾が電話に出たらしい。

あたふたする雛子に「大丈夫」と目で合図を送り、未来はどんどんと話を進めていく。

内容から東京行きのことを告げているようだった。

「そ、一応2泊の予定で行くつもりなんだけどさー……うん、わかったわかった。その辺は私に任せて! もちろんアンタの……そりゃそうでしょー、男見せなさいよ……あーもーうるさい。はいはい、代わるわよ」

自分の手元に戻ってきた電話を急いで耳元へ近づけると、「雛?」と電話の向こうから優しい声が降ってきた。




「もしもし、慎くん?」

『東京来るって?』

「うん。迷惑じゃない?」

『当たり前だろ。そんなに時間は取れないから、夕飯食べるくらいしか出来ないかもだけど、絶対会いに行くから』

「ありがと」

電話の向こうから慎吾を呼ぶ声が聞こえてきた。

「仕事中だったの?」

『うん、ちょうど休憩中だったんだけど、呼ばれたからもう行くわ』

「頑張ってね」


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