愛してるの代わりに
番外編

突然の来訪者

雛子が慎吾の元へやってきてしばらくした３月のある日。

雛子は、朝早い飛行機で地方から帰ってくる慎吾の為に、朝食を作っていた。

３月に東京に引っ越してきて新婚生活を始めたふたりだったが、慎吾の仕事が忙しいのもあって、中々ふたりの時間は過ごせない。

１週間の地方ロケから帰宅する慎吾の話だと、少し長めに休みがもらえそうだという。

「１泊くらいで旅行にでも行くか」

出発前にそう言って、頭を撫でた慎吾の笑顔を脳裏に浮かべながら料理をしていたその時。




ピンポーン。



「おかえりなさい、慎くんっ！」




勢いよく玄関を開けた雛子の目の前に現れたのは、

「こんにちは～」

「あだ～」

元気よく挨拶する女の子と、少し眠そうな男の子。

「初めまして、雛子ちゃんっ！」

「ごめんなさい、急に押しかけて……」

ニコニコ、屈託のない笑顔で笑う男性と、彼の肘をつつく女性。

そして、

「ただいま、雛」

苦笑いを浮かべる慎吾だった。

< 90 / 92 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop