となり。
第一章
今は5月中旬。過ごしやすい気候が続くある高校の音楽室。数人の生徒が楽器を持ちそれぞれ練習をしている。

となりで器用にトロンボーンのスライドを動かす1つ上の佐々木颯汰先輩。
トロンボーンの深く心に響く音が音楽室いっぱいに広がる。
必死に綺麗な音を響かせる先輩が輝いて見えた。

『やっぱイケメンだなぁ』

横目でそっと盗み見る。この時が大好きだった。小さい頃から臆病で引っ込み思案の私は人と目を合わせることができなかった。

佐々木先輩を見ていると時間なんてあっという間に過ぎていった。

しばらくすると佐々木先輩は片付けをして低く少しだるそうな声で

「おつかれさまでしたぁ」

と帰ってく。

その後ろ姿ですら大好きだった。
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