追憶のエデン
広い森とあの日見た湖の上空を越え、そこから先はあたしの知らない場所が見えた。
結界といわれるベールを抜ける時、グレンは何か呪文めいた言葉を口にする。すると辺り一面闇に染まり、一気に夜になった。


「この先もイスペラディティア?」


「違うよー!でもすっごく楽しいとこかなぁ。
なんてったって俺の住んでる国だからね~。」


言うやいなや加速する。


するとまるで色とりどりの宝石をひっくり返したかのような街が見え、近付くにつれギラギラとしたネオン街が広がれば、この国の入口であろう場所に降り立った。



チカチカと激しく点滅を繰り返すスポットライト、派手な色使いのネオン。重低音のリズムを刻み続け、煽る様な大音量のダンスサウンド。そして露出度の高く、派手なメイクと髪をした若い女性や、チャラチャラとした派手な若い男性で街は溢れかえっていた。


そんなこの街の光景に唖然としていると、隣でグレンがクスクスと笑いを堪えていた。


「…ック…もぅッ駄目…あはははッ!
未羽なんつー顔してんのぉ?」


とうとう笑いを堪えきれなくなったグレンを余所に、まだあたしはこのチカチカぐるぐるするこの街に完全に気後れしてしまっていた。


「ここがグレンの住んでる街?
…何か、すごいトコだね…。」


「すごいでしょー?

ようこそ。
魔界最大歓楽都市、『ルストリア』へっ!」


両手を広げ、自慢げに声高らかグレンが告げ、そして未だに動けず固まっているあたしを見兼ねたのか、グレンが「おいで」と言い、あたしの手を引きながら漸く歩き出せば、グレンはこの街の事を教えてくれた。



「この街はなんて言うかぁ、欲望の権化の様な街かなぁ。
だからこの街には、全ての快楽があるから、超気持ちよくてぇ、超楽しいんだよっ!


まっさっにぃ~、愉悦っ!!」


目を輝かせ力説するグレンの言葉にあたしも何だか可笑しくて笑顔になると、それに気付いたグレンも優しくあたしに微笑みかけ、更に街の案内をしながら、適当に歩いていた。
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