追憶のエデン
俺があのクソ親父や、姉様と生活を共にするようになって数か月の月日が流れた。
相変わらず、補佐として回ってくる仕事をこなし、空いた時間は姉様に裂く。そんな毎日を人形の様に機械的に送っていた。


そんなある日、姉様の部屋から泣き叫ぶ声が聞こえ、護衛という仕事も背負っている俺は仕方がなく声のする部屋へと足を運ぶ。



「嫌っ!離して!!……あんっ…やっ、め…!!」


「お前だって気持ちいいくせに何、純情ぶってんの?それに、“サキュバス”なんだから、こういうイケナイ事が大好きなんじゃないの?お前も俺の身体、好きだろ?」


「ああーっ!……嫌ぁ…あっ……ふっん……」


「面倒くせぇな!いい加減慣れろよッ!」


部屋のドアを開ければ、客人である、どこぞの坊ちゃんが姉様の上に跨り、姉様の綺麗な顔は涙で濡れ、身体にはその男の体液と自身の体液でぐちゃぐちゃに汚れていた。


「グ、レン……」


「いつまでも、何見てんだよ!!さっさと出てけ!」


男はそう叫ぶが、何故か姉様の涙を見た瞬間、姉様から目が離せないでいた。


ただ、


「グレン……見、ない…で……」



姉様が目を反らした瞬間、俺は男を殴り飛ばし、窓から投げ落としていた。
そして優しく、姉様を抱きしめていた。


いつも気丈に振舞う姉様だから気付かなかっただけで、こういった事が何度もあったのかもしれない。
そう思うと、この女の心の闇をもっと知りたくなった。何故そう思ったのかなんて分からない。
ただ身体を小刻みに震わせる姉様がほっとけなかった。


「……ごめんね、姉様……。勝手な事しちゃった……。」


「うんんっ!グレン…グレン…あり、が…っ、とう……。」


そう言ってまた姉様は俺の腕の中で泣いていた。
安心させるように更に腕に力を込める。


この時はまだ気付かなかったけど、きっと、この時姉様を一人の女として意識し始めたんだど思う。



「姉様……もう泣かなくて大丈夫だよ?
俺が…俺が、姉様を守るから……。どんな悲しみからも……。」
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