追憶のエデン
あの日を境に、俺と姉様は色々な話をする様になった。
といっても補佐の仕事の合間しか時間は作れなかったけど、屋敷内を散歩しながらとか、時にはお茶をしながらとか。
俺と姉様の間にはこれ以上の関係はなかったけど、それでも十分過ぎるくらい俺は毎日幸せだった。



(……十分幸せだとは思うんだけど…)


「これくらいはいいよね?」


静かな部屋には姉様の小さな寝息だけが響く。
そして優しく触れるだけのキスを姉様の愛らしく小さな唇に一つ落とす。


それだけで、十分過ぎるくらいの幸せから、死んでもいいくらいの幸せに変わっていった。


これは俺だけの幸せな秘密――。



だから誰もこの幸せを壊さないで?





「グレン。貴方の髪も、肌の色も、瞳の色も、全部わたくしとお揃いですわね。
でも、グレンの瞳の色の方が美しい宝石みたいにきらきら輝いていて、わたくしは大好きですわよ」



貴女が大好きだと言ってくれた大切なお揃い――。



ずっとこの幸せが続けばいい。





「わたくし、実は……その、気になってる方が、出来ましたの……」



・・・・・・・・・・・・・――。



上手くいかなければいいって思ってごめんね…






「グレン……、ルキフェル様の姿になって、わたくしを抱いて?」



――――――――――。




姉様はそれで幸せ?







「ルキフェル様、愛してますわ……。」



……姉様が、望むなら……姉様を愛せるなら……俺は“俺の姿”じゃなくても構わないなんて、本当は――。


ずっと、嫌だった


ごめんね、我が儘で…


でも解ってるから…


俺の事なんて本当は誰も求めてくれる筈ないって事ぐらい、嫌ってくらい解りきってるから――


それでも、これだけは叶えてくれてもいいんじゃない?



お願いだから


せめて


貴女を本気で愛してた俺の事、忘れないでいて?


……少しでもいいから覚えていて?――
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