追憶のエデン
頭がぼんやりし始め、何も考えられなくなり始めた時、唇が離され、銀の糸がツーッと伸びぷつりと切れる。するとルキフェルの冷たい瞳とぶつかり、ドンッと大きな音を立て、ルキフェルの両手があたしの顔の直ぐ横に着かれ追い詰められれば、背につるりとした陶器の感覚が伝わった。



「何であの男にのこのこと着いて行ったの?優しくでもされた?あの男なら信用出来たって事?……それとも、期待、してた?」



普段よりも低い冷淡な声――。


「違っ!!」



「……ねぇ、あいつに何処まで触られたの?……あぁ、それとも触らせた?ねぇ、どっち?」



するりと太ももの上をルキフェルの掌が撫で上げれば、先程の出来事が脳内を駆け巡り、恐怖が込み上げてきた。
そしてじっとりと足の付け根を触られれば、ガタガタと小刻みに身体が震え始める。



「ふーん……。」



「止めてッ!……ルキフェル…ッ……や、だっ…!」



――ぴちゃり



「止めない――。」



耳の中をぬちゃりと淫猥に舌が動き、耳たぶを甘く噛み、ちゅっという音と共に吸われ、唇が離れれば吐息すらも刺激となり敏感に身体が捕らえていく。


「嫌だ、嫌だってこの口は言っておきながら……君は、与えられる快楽をすんなり受け入れる……ねぇ、本当は自分を甘やかして、気持ちよぉーくしてくれる男だったら、誰でもいいんじゃないの?クスッ」


耳元で冷たく侮蔑を含んだ声が甘さを伴って吹き込まれる。



「あの男にも……快楽で蕩けた、そう…この顔を見せてたの?」


「――ッ!そんな顔してなんてないっ!!」


「ふーん。……ハッ!」


蔑み嘲笑うような瞳で見下ろされ、心がズクンっと重くなる。
そしてその反応を楽しむかの様な冷酷な微笑みを向けられ、その表情すらも顔から消えると、胸に鋭い痛みを感じた。



「痛ッ――!」



見てみると、グレンによって散らされていた紅い華から、爪で思い切り横に裂かれた傷跡が出来、血がぷつぷつと紅い玉の様に溢れては、水滴と交わり肌を滑り落ちていた。
そしてそれを眺めていたルキフェルは口角を上げ、にやりと笑うと舌で自分の唇をぺろりと潤し、先程の傷口をぴちゃぴちゃと舐め始めた。
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