追憶のエデン
(――痛い。)


ざらりとした舌の表面が傷をなぞる度、ぴりぴりとした痛みが起こり苦痛に顔を歪ませるが、ルキフェルは構わず必要に舐めあげる。しかし反対側にグレンの噛み後を見つけ、そこに更に自分の噛み後を塗り替え、刻み付ける様に歯を力強く胸に当てられ、痛みに呻けば、ルキフェルはもう片方の胸の飾りを優しく愛撫し始めた。



「あっ…ふっ……ぅ、んっ」


感じたくなんかないのに、痛みと快感が混ぜこぜになった感覚が身体を駆け抜ける。


そんなあたしの反応をルキフェルは上目使いで伺いながら、噛んでいた力を緩め、噛み跡をちろちろと赤い舌を見せながら舐め始めた。


左右に小さく動く舌が目に入り、身体が羞恥心を伴い更に熱くなる。
ルキフェルの視線に耐えられず、顔を背ければクスリとルキフェルの笑い声が聞こえた。


「打たれた痕は赤く腫れ上がり、幾筋もの切り傷は血が固まったまま…。無数の噛み跡にぃ、紅く散らされた、キスマーク……。
君は痛いのもお好みなの?クスッ
とーんだ変態だね?
こんな事されても、君はダラシなく喜んでたんでしょ?アハハッ!



それにしても……



汚い身体――。」



――ザバンっ!!



ルキフェルに頭を押さえつけられ、お湯の中へと頭まで押し込み、沈められる。
急な展開に驚き口を開けてしまうと、ゴボゴボと勝手にお湯が口から体内へと容赦なく入り込み息が出来ず、必死にもがく。
すると今度は髪を掴まれ、無理矢理水面から顔を出されれば、ゴホゴホとむせ返りながらも呼吸を整えようとした、その時――。



ルキフェルの舌が口腔内に入り込み、深いキスが角度を変え、何度も繰り返される。
咽そうになる度、舌を絡ませられる。気道を整えようとするのを邪魔するかのように……。


あまりの苦しさに酸欠状態の身体はくらくらしてきていた。


(……駄、目だ…この……まま、じゃぁ……)


完全に危機を訴え始めた身体は、無意識にルキフェルの身体を押し返す。


するとルキフェルは更に自分の方へと引き寄せ、口の中へと自分の唾液を注ぎ込み、完全に口を塞げば、ゴクリとあたしはそれを飲み干すしかなかった。


そしてそれに満足したのかルキフェルの口が離れ、漸く酸素を咳込みながらも取り込む。


「まだ終わってなんかないよ?
だって…たーっぷり君は誰のものなのか、


その頭に


その心に


その身体に



分からせてあげないと。」
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