追憶のエデン
声は暗く、一層低く甘く落とされる。


頭のてっぺんからするすると肌を指先が滑って行き、顔の輪郭をなぞり、首、胸、腰へと下りて行く。
気にしない様にしようとしてるのに、その指先がもどかしく、より敏感にルキフェルの指の動きを意識してしまい、体温を上昇させ、甘い吐息が自然に小さく口を吐いてしまった。


そんな自分が悔しくて、口に手の甲を押し付け、噛んで痛みを感じる事で、この甘くもどかしい刺激を逃そうと必死に耐える。



「そんなに嫌なの?あの男は良くて?」


「――ッ!グレンにだって許してなんか、いないっ!!
一体何なの?


それに……
何で……何で、あんな酷い殺し方を二人にしたのッ!?
…あんなの…あんまりだよ!!!」


ルキフェルは何か大きな勘違いをしている。
あたしがグレンに自ら触らせたと完全に思い込んでしまっている。


すると目の奥が鈍く痛くなり、ルキフェルが自分を信じてくれない事が酷く胸を苦しくさせる。
また同時に、あたしを騙して傷付ける為だったとはいえ、あの二人が見せた優しさまでが嘘だなんてどうしても思えなかったあたしは、二人を残虐的な手法で殺したルキフェルがどうしても許せなかった。



「ふーん…
ねぇ、君ってどこまで愚かな偽善者なの?
そんな取り繕った感情で僕を責めても無駄だよ?
だって僕は忠告した筈だ。君にも……あの女にも。
……酷いのは、どっち?」


「――ッ!そ、れは……。
だとしても、やり過ぎだと思う!
だってアリシアさんも、グレンも、ただ……」


「ただ、何?


……ねぇ、未羽?いつまでそのクダラナイ言い訳続けるつもり?
それに君の口から僕以外の男の名前なんて聞きたくない。




君の全ては、僕のモノだ――。」
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