好きになんか、なってやらない
「いらないです。こんなの」
もう一度見つめると、やっぱり憎たらしい表情をしてじっと見つめる黒猫。
それに似ていると言われて、なんだか腹が立ってきたので、ズイと突っ返した。
「へー、いいんだ?これを俺に渡して」
「どういう意味ですか?」
「俺にとってはこの猫、玲奈にしか見えないから、めちゃくちゃ可愛がっちゃうぜ?」
「……」
岬さんは、突っ返された黒猫を受け取って、口元につきそうな距離で抱きかかえる。
「そうだなー。やっぱ名前はレナ。
いたるところに、俺の印つけてやる。レナー」
「っ……や、やっぱり私によこして!!」
ゾゾゾッと背筋に悪寒がはしり、慌ててぬいぐるみを取り返した。
キッと睨みあげた先には、してやったりと言ったように、ニコリと笑う岬さんがいて……
「大事にしてくれな。俺のレナ」
「この子はレナって名前じゃありません!」
完全に、岬さんのペースに呑まれた……と気づいた時には、彼はもう自分の席へとついていた。
「あんたたち、絶対にお似合いだよ」
「やめてよ。本当に」
今のやりとりを見て、いったいどうしてそう思えるのか……。
机の上には、じっと私を睨みあげる黒猫がいた。