好きになんか、なってやらない

　
「その前に、この体勢どうにかなりませんか」
「無理」
「無理って……」


本当に意味が分からない。

さっきまで、香織に向かって、人のことをゲームの対象でしか見ていないような話をしておきながら、こうやって悔しいくらい優しく抱きしめている。


突き放してやりたいのに……
いつもみたいに振りほどきたいのに……


胸がドキドキして、
この腕に触れていたいとさえ思ってしまう。


「………ですよ…」

「ん？」


もう一度、こんな言葉を吐くなんて地獄だ。拷問だ。
だけど私の中の、女の子としての感情が、どんどんと大きくなっていく。


もう、一度は恥をさらした。
だから今さら何度さらそうが関係ないんだ。


観念して、体の力を抜き
掻き消えた声をもう一度発した。



「好きですよ。悔しいけど」



そう言った瞬間、
私の体は反転し、目の前から岬さんに抱きしめられていた。